『神の値段』第2回
第2回は、引き続きセリフや表現の各シーンを抜粋しました。私個人の印象に残った言葉の数々なので、あてにならないかもしれません。ですが、もしこの本を手に取る機会があってもなくても、本を読み、あなたの印象に残った言葉を連ねてみるのも面白いと思いますよ。
⚠︎以下は、ネタバレ覚悟のものです。情報を入れたくない場合、純粋にこの記事を読まない方が賢明です。私は前情報をあまり入れたくない派ですが、取っ掛かりがないので少し残念に思うこともあります。実のところ、私にはどっちがベストなのか未だに分かりません。
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ページ数は、最初に出てきたものを挙げています。
1. ニューヨークの一流ギャラリスト(川田無名の新作作品を直接預かって販売するギャラリーのトップ)、ジョシュア。
「アーティストに餌をやると、指を噛まれる。」 (p.123)
2. 唯子の夫、銀行員の佐伯と私(主人公)のやりとり。
(私)「どうしてラディさんや他のコレクターだちは、あんなに高価なものをいとも簡単に買えてしまうんでしょうか」
佐伯は頬杖をつきながら笑った。
(私)「でもいくらお金持ちだからといって、数億円を支払うわけですから、そこに躊躇はないのかなと思うわけです。ましてや、それは一枚の絵なのにどうしてそこまで支払えるのか、と」…略
(私)「でもアートを買う動機って、単に投資だけじゃない気もしますけどね」
(佐伯)「そう思っている限り、うれないだろうね。たしかに優れたアーティストは守られるべきなのかもしれない。でもアートは社会奉仕だと信じて寄付を募ったところで、ぬるいラブアンドピースしか生まれない。」 (p.165)
3. 川田無名のアトリエで働くスタッフ、白山。
「実は僕、土門さんの気持ちも分からないではないんです。だって不思議なもので、こうして毎日紙という素材に向き合っていると、次第に先生はこの紙そのものなんじゃないかって気がしてくるんです。…略 。
人はそれを気が狂っていると言うのかもしれませんが、考えてみれば本来白い紙というのは、聖域の象徴なんです。白い紙がいったん注連縄に付けられると、神域と現世を隔てる結界の役割を果たします。また榊の枝につけられれば、玉串となって人や土地を清める祓具に生まれ変わる。
…もともと白というのは神聖な色なんです。」(p.195)
4. 川田と交流のあった、唐木田。
「されど死ぬのはいつも他人」(p.238)
この言葉はフランス人の現代アートの創始者(マルセル・デュシャン)が初めて使ったもの。自分で自分の死や墓を見ることのできないが、他人の死は見ることのできる。つまり、その自分の死は、いわば観念でしかない例え。
「金というのは記号みたいなもんで、持つ人、使う人によって、全然意味が違ってくる。無名さんにとって、金というのはいったいどんな意味を持っていたのか、私たちには分かりません。…
無論アートティストにとってもお金は大事だし、理想の作品を制作するために必要不可欠です。もっと言ってしまえば、アート自体がマーケットに支配されている部分もある。」 (p.246)
(残りは、第3回へ延長します。)