itoh-imaginary0205のブログ

ゆかしい雑記物。はたまた備忘録。

"ズートピア"(2016) 動物たちの楽園を求めて

 

 

ズートピア、いわゆる動物たちの楽園。

この映画は子供が観ても大人が観ても、とても意味のある作品だと思いました。

私はこういう少しディズニー系の映画は苦手でしたのですが、登場してくるキャラクターたちの表情豊かな顔や動きは、とっつきやすくて笑ってしまいます。

ズートピアのコンセプトは、「誰もがしたいことをする」ひとしく理想的な社会です。この社会の夢と現実がどれだけ違ってくるのか、様々な視点で描かれていると感じました。

ではまず、なぜこの作品が面白いと思ったのかを挙げます。それは、ズートピアは、思ってたよりも楽園ではなかった、ということです。最後にしてもいくぶんマシになった社会で、楽園ほどでないが豊かに恵まれた社会なのです。このへんが所々で巧妙に表現されています。

残念だった点は、やはり肉食動物たちが凶暴化させる要因が「花」という扱いだったところです。もとは文明化し、理性を獲得した動物たちなのに「生物学的に」の一言で、肉食差別が始まってしまうというものでした。この本質的な問題から実は「花」だったんだよ、という顛末は、もう少し展開があればなぁと感じました。

ですが、私が勧める特に注意して見てほしいポイントは、主人公の女性ウサギと副-市長だった女性羊の考え方の違いが鮮明に映る点です。

彼女らは決して動物たちから見た目は強くなく、むしろ弱い立場として扱われた存在です。例えば警察官の職業は屈強な動物にしか成れないから小柄なウサギには無理だ、などです。副市長のポジションも高いとはいえ、意外に秘書扱いだと不満を漏らします。

主人公のウサギは、たとえ虐げられても身の丈を超える成果を出そうと頑張り、「肉食も草食も分け隔てなく、誰もがしたいことができる」社会を目指して頑張ります。

他方、羊は肉食動物たちを排除し、「ズートピア内90%の草食動物たちだけ」の社会を仕立てあげようとします。

草食動物たち、という区別をつけるなら彼女たちは同一の動物になります。羊の謀略はズートピアを安定的にするために同一化させる、より合理的な支配と呼べるかもしれません。ウサギは草食動物としてそれなりの地位は高められるのです。

しかし、主人公のウサギはそれでもズートピアのコンセプトを維持しようと選択したのです。たとえ虐げられても頑張れば認められる社会があると信じて。そしてそういう人が集まれる社会を望むのです。

このように、社会をどう捉えるかという本質的な問題がこの映画に隠されています。差別や虐げられる社会をどうズートピアに近づけられるのかという問いなのです。あらゆる動物たちは体格も、種も、能力も、性格も見た目も異なっている雑多な集まりです。そこに社会の差別や偏見が上塗りで形成されていく、これは人間の社会と照らして想像する機会にもなりましょう。

 

 

レビューも高い評価になっているのもこういった実験的なユートピアを描いたからなのでしょうかね。

したがって、この映画はとても奥深くて面白いものです。是非おひまがあれば見てみてください。